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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


 アパートの六畳間は、わたしの生活の雑多なものが置いてあった。そこにベッドを入れたので、つまりダンボールの山と、衣類と、ベッドが占めていたので、彼女を誘っても、狭いキッチンでお茶をすすらなければならなかったので、部屋に戻ったわたしは、彼女がことわってくれてよかったと思った。いったいどのぐらいここでの生活を送らなければならないのだろうか。わたしはひとりキッチンの椅子に座って、小さなテーブルの上の白い桔梗の植わった鉢を撫でていた。アパートから少し行くと可愛い花屋があって、そのお店の前でひとつぽつんと売れ残っていた白い桔梗をわたしは買ってきて、淋しさをまぎらわせていた。ライはわたしのベッドにまるくなって寝ていた。
 あのお屋敷跡には何か、人の考えの及ばない何かが能いているのかもしれなかった。これで三度目の事故が起きて、たぶん工事は大幅に伸びてしまうだろう。わたしはその間ずっと波立つような暮らしを続けなければならないのだろうか。このアパートもめいったが、ここを出て、わたしの、修理されたお家に帰ったのちのことを考えると、もっとめいってしまった。わたしはただぼんやりと、ライを眺め、窓のほうを眺め、この白い桔梗を眺めて、時を過ごした。
 彼女に会いたい…先ほど別れたばかりなのに、彼女に会いたくなった。だってもあれから一時間は経っただろうか。彼女は今何をしているだろう。病院になんの用があるのだろう。治療がなのか、お見舞いなのか…聞けばよかった。こんなに頭を悩ませるぐらいなら、いっそ、一緒に行けばよかった…それもたぶん無理なのだろう…ああ、人恋しい、なぜだろうか、雨が降るとひとりでは耐えがたい寂しさが湧き出してくる…青春期のわびしさがよみがえってくるんだ、このアパートでは…何もわたしを取り囲むもののないように、寂寞とした箱に詰め込まれたように、また、生きものの存在しない世界に落とされたように、さびしかった…
 誰かがドアをノックした。わたしは出たくなかったけれど、もしや彼女かもしれないと思い、ドアを開けた。あの男が立っていた。お家の図面を持って参りました、と言った。わたしは見てもわからないので、わたしが撮った家の写真…植物を撮ったときにフレームに入っていた家の写真を十枚ばかり渡して、同じ家にしてくださいと言って、彼を帰した。
 わたしはますます孤独になった。人と対面すると、その人間の消えたあとのことを考え、会った時から、もうすでに心が沈んでいった。
 もうわたしはマンション建設と関わりたくはないのに、しだいに向こうからじわじわとわたしのほうにそれが近づいてくるように思われた。あのお家に引越したばかりの時は、まだお屋敷の煉瓦の塀と、錆びた門扉とがあって、わたしとは隔てられた存在だったものが、ライが現れ、煉瓦塀は取り払われ、お屋敷を囲んでいた森も伐採されて、だんだんとわたしのなかにその土地の持っている魔ののようなものが流れ込んできたのだ。そしてついに、その力がわたしの家を壊し、わたしをそこから追い出してしまった。わたしは、あの土地に住んではいけないのか?もともとお寺の境内だった土地から、すでに供養されなくなった霊魂が彷徨っているのか…あの僧侶のお墓のように、うち捨てられた夢想が墓石となって、地面の下に無数に埋まっているのかもしれない。わたしだけではない。彼女もあの家を、追われたのではないけれども、出て行くように仕向けられたのだ、きっと。それに、ライの乗っていた石は、ひょっとすると墓石ではなかったのか、今はどうなってしまったのか…ふたたびわたしの心は重くなっていった。

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