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Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 わたしは彼らの探してきたアパートに移った。坂を下りた所にある、六畳一間のアパートだった。別に狭い所には慣れていたし、苦情を言うつもりはないけれど、あの部屋のわたしの大切な小物たちを復元することは不可能だった。なんども足を運んでは、瓦礫の下から、少なくともわたしの手作りのものだけは拾ってきた。
 ある雨の降る日、傘をさして瓦礫をひっくり返していたら、彼女の車がやって来た。そして、車から降りて、傘もささずに呆然とわたしの「お家」を見つめた…ああ、今日は木曜日?だとしたら、あの日からまだ二日しか経っていないのか…わたしはもう一週間も二週間も過ぎ去ったように感じていた。
「野川さん、美千夫さん…わたし…」よく彼女の声は聞き取れなかった。わたしの耳がおかしいのか、雨が声をさえぎるのか、それとも、わたしの落胆した心が、彼女に眼を合わせたくないのか…いや、彼女に会いたかった。とても、ものすごく会いたかったんだ!わたしは彼女の方へ歩み寄った。そして言った。
「よく来てくれましたね、あやさん…これもひとつのシグナルですから、ぼくはそこから何かを学んで、ふたたび、この可愛いお家に戻ってきます、必ず…」わたしがそう言うと、彼女はわたしの腕を握り、手を握って、熱い視線をわたしにくれた。
「ニュースで聞いて、飛んで来たかったんですけれど、出張していて…ごめんなさい、美千夫さん…」ああ、やさしい人だ。わたしはこんなにやさしい人に出逢ったのは、わたしの母以来だと思った。わたしも彼女の手を強く握り返して…彼女を抱きしめたかった。ほんとうにその身体を抱きしめたかったんだ。でも心で彼女を抱きしめた。
 わたしは彼女の車に乗って、坂の下のアパートまで送ってもらった。お茶に誘ったが彼女はこれから病院へ行くと言って、そのまま去って行った。アパートの前で、傘の柄を肩に置いて、彼女の車を見送っていたわたしは、なぜか、泪がこぼれた。雨の日に泪を流すなんて、なんだか、空になったようで、違和感はまるでなかった。素直に泣けた。素直に泪が溢れた。

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