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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 お屋敷があった空き地の西側を回り込むと、北西方向へゆるやかに登る道が続いている。かつてはこのあたりに寺院があったと聞いているけれど、今はヒノキや灌木に覆われて、土地の人が山菜を取りにやって来るぐらいだった。わたしがここに終の住み家を決めたのも、この家の可愛らしさもあったが、山林が近くにあり、植物画のモデルにする樹木類がたくさんあったからだった。わたしはとくに灌木類が好きで、種子を蒔いては苗を育て、庭を少しずつ薮のようにする計画があった。ハーブ類は日光を好むものが多く、共生はむずかしくなるけれども、家の軒下をハーブの居場所にしようと考えていた。パズルのような可愛いハーブ花壇は残したかったけれど、しだいにシュラブの苗に侵食されて、ハーブたちはしだいに家の脇へと追いやられていた。
 もちろん、軒下はハーブたちにとっては、最適の場所で、日当りと、乾燥を好む彼らは、かつての住処を灌木たちに奪われてしまったことを恨むでもなく、壁際でいい顔をして、澄ましていた。
 そのなかのキャットニップにライはいつも寝そべって、眼をつむり、なにも考えないでいることが幸せのような表情をしていた。わたしもライと三年もいっしょにいたせいで、だいぶライの顔色がわかるようになっていた。淋しそうな顔に見えるときが多いのは、不思議な眼の色と、それにそぐわない毛の色彩のせいだったかもしれない。なにか、わたしの心を掴んだときや、別のなにかを見たときには、眼を一瞬大きく見開いて、左右の色の違う宝石を輝かせた。
 あの時もそうだった。ライを抱いて、お屋敷裏の林へ続く道を散歩していたとき、突然ライが顔を上げて、眼を見開いたのだ。ヒノキの向こうになにかがいたのだ。わたしには見えなかったが、ライはそれを見て、反応し、耳を立てた。わたしは道をそれて少し薮のなかへ入ってみた。林のふちは、イネ科や、シソ科の植物が茂り、つる草が灌木によじ登って、釣鐘状の薄紫の花を咲かせていた。その向こうのヒノキの幾本か並んだ陰に眼をやると、人のようなものが見えた。もう少し近づくと、それは人ではなく、地衣類を被った石だった。先の方がやや太くなっている円柱形の石塔だった。わたしはゆっくりとそばへ行き、その石を撫でてみた。ぽろぽろと、灰青い地衣類が落ちて、石の肌を見せた。風化したそれは、死人のように白く、石のぬけがらに見えた。
 これはたぶんお墓であろう。それも僧侶のものであろうか。ライはすでに眼を閉じて、わたしの腕のなかで眠っていた。
 誰にもかえりみられずに、ひっそりとたたずんでいる。この薮のなかに、いつからあったのだろうか。わびしさがわたしの心にのしかかってきた。たましいはいずこにあるのか、わたしにはわからないけれど、向こうの倒れた石塔の陰に、イチヤクソウが咲いている。たましいのよりどころが花であるならば、この花がそうであってもいいと、わたしは思った。

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