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Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 その後わたしは、眠るたびに同じ夢を見るようになった。顔のわからない、または、顔の見えない女性が「ライ」をその胸に抱いて、あの巨木に似た木につぶされたわたしを見下ろしている、夢を。
 わたしは常に、眼を見開いて、すべての状況をつかんでいるつもりだったが、その女性の眼は、わたしがなにも理解していないことを伝えていた。わたしは助けを求めることはしなかったが、わたしの腕は助けを求めるがごとく、上方へ差し出されていた。彼女はわたしの親しい人のようだと、ある人が言うので、わたしはいつもその見えない顔を確かめようとするけれど、首自体存在しない人間のように、頭部はまったくの暗闇だった。
 この夢の不安定さは、わたしが幼い頃、眠るごとに見たものと同じだった。その夢は、ある地点からある地点まで、わたし自身が移動するのだけれども、わたしはひとつの球体で、その球体が波立った地形に、揺らぎながら、あるいは震えながら、また跳ねながら、移動していく夢だった。目覚めたときの不安な心持ちは例えようもなく、いつも、母に抱きついては、その均衡を失った心のバランスを取り戻そうとした。
 その例えがたい心の空白に似て、この夢もまた、わたしの心にぽっかりと穴を穿った。なにがそれを充たしてくれるのか、じっと、わたしは待つしかなかった。

 巨木はしばらくのあいだ、広い空き地の中央に頭を向けて横たわっていたが、切り株との距離がありすぎたのか、樹木のたましいがしだいに薄くなっていくように、葉も垂れていき、ついには緑色のまま枝を離れていった。幹の洞は暗さが増していき、はちきれそうだった瘤も、心なしかしぼんでしまったように見えた。
 わたしはライとともに、玄関ポーチのナーシングチェアに座り、お茶をすすりながら、夕暮れに向かって黒々としていく巨木の遺骸を眺めていた。
 一台の車がやってきた。空き地になったお屋敷跡に入っていき、巨木のそばに止まった。男がひとり降りて、木に向かって手を合わせた。亡くなった人々の冥福を祈っているのだろう。そして、スケールを取り出して、幹まわりや長さを計り始めた。それは、遠くから見ると、黒い森に蠢く動物のように見えた。たぶん明日にでもこの木を切り刻むのだろう。そのために、祈りと、計測をし、最後の人間らしさを、この巨木に伝えようとしているのだ。わたしとライは、黙ってその光景を見つめた。静かに夏の陽は傾き、ひぐらしの声とともに、森の向こうに白くかすみながら沈んでいった。

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