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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 わたしたちは一日おきにあやのところへ行った、あやはしだいに衰弱していった。なにもしゃべらなかった。ただ手で大丈夫だからと言って見せるだけだった。

 食料もたくさん持って行った。でもほとんどあやは食べていないようだった…この穴はなんの穴だろう…棚があって、今そこには、あやのための食べ物や、着替えが並べてあった。電灯を布で蔽って、みんなの顔を寄せあった。あやはひどい姿をしていた。まるでコールタールのなかを這って来たようだった。顔にも黒い染みがいくつもあり、かさぶたのように貼りついていた…早くここから出さねば、わたしは母に言った。しかし母は首を横に振った…きのうも刑事が昼間うろついていたの、母がそう言うのを聞いて、わたしはあやの手を強く握った。
「いたいよ!りょう」あやが言った。わたしは、ごめん、と言って、あやを抱いた。まだ大丈夫、そんな気がした。

 それから数日が過ぎた。わたしたちが望んだ台風が来た。その晩も、母とわたしは出かける支度をした。外では風が木々の枝を曲げて、不気味な音を立てていた。こういう日はまさか誰も、刑事なんて誰もいないだろうと思った。でもいたのだ。わたしたちがテラスから外に、まさに出ようとしたとき…
「どこに行くんですか、こんな遅くに!」あの刑事が庭に立っていた。
 わたしは心臓が止まりそうだった。母も一瞬驚いた顔をしたが、すぐに冷静さを取り戻し…
「いえ、外でなにか大きな音がしましたので、なにかと思って…このハーブの鉢でも倒れたかと…」
「ふふん、そうですか、毎晩のようにどこかお出かけだったじゃないですか…今、屋敷を捜索させています…いいですか奥さん、わたしたちの眼は節穴じゃないですぞ!」まるであの校長のような口調だった。わたしはそこに座り込んでしまった…もうだめだ、あやは捕まってしまう、ごめんね、あや!…ずっとわたしたちを見張っていたんだ…わたしは悔しかった。あんな犯罪者を放って置きながら、その犯罪者を自ら裁いた人間を捕まえようなんて…
「奥さん!話を聞かせてもらいますよ…」刑事が一歩わたしたちに迫った。その時だった。風の音が急に強まって、轟音に変ったかと思うと、バチバチバチと大きな音がして、人の叫び声がとぎれとぎれに聞こえてきた。刑事は何事かとすぐにお屋敷の方へとってかえし、わたしたちもあとへ続いた。玄関まで来ると、お屋敷の上空が赤く染まっていた。炎だ!赤い炎がたけり狂ったように燃え上がり、黒い煙に変って吹き飛ばされていった。火の粉が無数に散り、風に舞う木の葉と混じって、不思議な流れを作っていた。風の方向が変るたびに、炎と煙と火の粉が、まるで踊っているようにお屋敷を包んでいた。それは美しかった。この世のものではない大きさと、色と、炎と、暗黒と、大気の流れによって創られたアートのようだった。
 母がくずおれた。わたしはずっと炎を見続けた。ますますそれは巨大になって天に昇っていった。お屋敷の屋根のはるか上空まで立ち昇り、左右に揺れては、一瞬暗闇を作り、また立ち昇っては、横に倒れた…
 あや!わたしは叫んだ、声が出ない…あや!もういちど叫んだ…母は顔を覆っていた。どんなに悔いていたか。今夜こそは、あやをあのお屋敷から出そうと言っていた母…ああ、もう一日早かったら、わたしもそう思った…わたしのあや…可愛いあや…わたしも悔しかった。どんなに叫んでも、もうあやには届かない…わたしたちは間違っていたのか、犯罪者と同じことをしていたのか、いや、犯罪者よりももっと重罪を犯していたのか!
 母の肩を抱いた。風と雨がわたしたちふたりを打った。まるで鞭のように、罪を悔いることを強いる罰のように…


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