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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 その日から母の顔が変わった。憂鬱な顔を時々した。母も悩んでいるのだろうか…わたしに灰川と名乗らせるべきか、鵜沓のまま、灰川を相続させるか…あやは、あやは佐々木を継ぐべきと思うが、わたしの子でもあるし、灰川を継ぐ道理もないわけではない、と…
あやの言葉が思い出された…あなたがしっかりして、灰川の汚れた血の因縁を断ち切らなければいけない…汚れた血の正体をわたしははっきり知っているわけではなかったが、なんとなく、自分の身体のなかにある、どろどろの血の流れがいまはじまったのではない予感がしていた。わたしのたましいのなかに巣食う穢れた遺伝子の蠢きを、己が知らないわけではなかった。心の表面には見えずとも、そのかたまりは確かに存在していたのだ。中空に集まって澱み、いくら切ろうとしても切れず、またくっついて、ゲル状にそれらは増殖し、わたしの精神を徐々に蝕みつつあったのだ。それを包み込む波もあったが、それ以上にこの波のうねりはしだいに大きくなっていった。

 そして、母とわたしは、わたしたちの心は、同体だった。同一のものをお互い映しあっていた。わたしの不安定な心はもはや母の手には負えず、母自身も分離していった。

 わたしはあれ以来、見るものすべて灰色に見えた。母はなにもしなくなった。なにかにとり憑かれているように、家のなかを歩き回った。あやの両親にあの男とあの女がのりうつり、わたしたちになにか悪い病原菌を運んできたのだ。わたしたちはともに感染し、ともに重病化していった…あや!わたしはあやを呼んだ。もう「あや」しかわたしたちを救えるものはいなかった。あやはきっとわたしたちにとって天使なのだ。救いの天使!あやならこの原因をつきとめ、わたしたちを治癒に導くだろう…わたしはそう思った。

 あやは現れなかった。あやを最後に見たのは、佐々木夫妻が何者かに惨殺され、娘の「あや」が行方不明だというニュースのなかで、その顔写真が出て、それを見たときが最後だった。
 わたしと母は、ソファーに座って、ぼんやりとテレビを見ていたときだった。お互い顔を見合わせて…あやが殺ったんだと、直感した。そして、あのお屋敷に来ると、思った。
 警察が家に来た。家のなかをくまなく捜しまわった。お屋敷も捜索していた。その態度から、あやが第一容疑者であることがわかった。わたしたちはなにも知らないと言ったが、疑いの眼差しで、それを刑事は聞いていた。知っていても、わたしたちが話すわけもなかったが、実際知らなくても、結末がどうであるかをわたしたちは知っていた。

 わたしは母に、校長と優子のたくらみや、あやがわたしにしてくれたこと、語ってくれたことをすべて話した。母は黙って聞いていたが、わたしが話し終わると、ほほえんで…あなたもあやも、大人になったわねえ、とわたしをふたり分抱きしめるように、大きくわたしを包んだ。母の眼は美しかったが、翳りのせいで少し眸が白っぽく見えた。
 打ち明ける、告白すると言う行為は、なぜこんなにも人を洗い流すのだろうか。憂鬱な日々を送っていたわたしたちに、雨が降った。土砂降りの雨だった。まるであやが空から天をひっくり返して降らせたような…わたしたちは綺麗に洗われて素顔に戻った。やるべきことがしだいに近づいて、その輪郭が見えだしたのだ。
 警察は、家とお屋敷を張っていた。彼らも必ずここへあやが現れるだろことを予想していた。しかしわたしたちにはわかっていた。あやがそんなへまをやるような子ではないことを。あやにとって変身することは何でもなかったはずだから…だって、あのとき、あんなにちっちゃな女の子になって、わたしたちを援けてくれたのだから…犯罪者の手にかかるわたしたちを救ってくれたのだから…
 わたしたちは盗聴もされているかもしれなかった。もちろん電話もかかってこないし、ケータイも電源を切っていた…いつも食料品を運んでくる小さなトラック以外、だれも尋ねては来なかった。


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