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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


 あやの帰る日がやってきた。わたしは繋がった腕を切り落とされるような気がした。二ヶ月近くいっしょにいて、いまさら離れる理由が見あたらなかった。これからもずっといっしょにいてもいいではないか、わたしとあやは双子なんだから、切り離されるわけなんてどこにもないのに…ほんとうに切り落とすならば、それならば、あやの方にわたしの腕をくっつけたまま、切断してほしい…
 あやは、ぜんぜん平気のようだった。だって…また遊びに来る、また泊まりに来るよ、りょうちゃん、待ってて…そう言って帰っていった。
 わたしにとって、あやの存在は、わたしの心臓の半分だった。いままで心を満たすものは、母であったり…夢想であったりしたが、わたしの半分の空白のすべてを満たすことはなかった。あやは、あやの心と身体は、わたしの二分の一の心と身体を完成させたのだ。揺れ動く不安定な精神は、回転するときに多くのものを振り落とし、停止後、その空白を埋めようとするものだが、もともとわたしの半分しかない独楽のような自己では、まともな回転すらできなかったのだ。もちろん母の芯はわたしにとってとても心強いものであったし、母の胸に抱きしめられることは、わたしの心の充足をもたらしたが、その独楽のぶれは、周りのものまでもぶち壊して回転し、ついには自己破壊を起こしていたのだ。しかし、あやの登場は、わたしの半分独楽を完全なものにし、永久回転独楽に変身させたのだった。そしてそれはもはや、停止することはなかった。停止させることが不可能になっていたのだ。まるで静止しているかのように回転する、わたしの「自己」。けっしてもとの半分になってはならないのだ。「自己」の深い奥底にひそむ、父の「道緒」や、伯母の「麗紗」や、彼らの母である「礼」と、わたしたちふたりの遺伝子の持つ毒性がわたしを侵したとしても、今は、「あや」ひとりの存在が、わたしの精神を支えていたのだ。
 角のところまで、あやを送った。あやは振り返って、「お母さんをたのんだわよ!」と言うと、くるりと向きを変えて、続く坂道を駆け下りて行った…

 それから数日後、あやの両親が家に訪ねてきた。雨のなかをタクシーでやってきて、玄関先で雨を払いながら、お天気に文句を言っていた。
 母が出た。わたしはダイニングにいたが、人と顔を合わせるのはいやだったので、すぐに自分の部屋へ引っ込んだ。ダイニングにふたりは通された。
「はじめまして、佐々木と申します」
「ようこそ…はじめまして、鵜沓玲と申します」
「娘のあやが、このたびはほんとうにお世話になりまして…」
「いえ…とんでもございません、うちのりょうも大変喜んでおりましたのよ…どうぞお座りくださいませ」
「ありがとうございます、あやも、こちらから戻りまして、なんだかうきうきしていて、とても明るくなりましてね」
「そうでございましたか…それをうかがって、わたしも嬉しいですわ」
「…ところで…」…そのあとの言葉は聞こえなくなった。声を小さくしたのだろうか。それにしてもこの佐々木と言う、あやの父親の声は、あの男、校長の声にそっくりだった。兄弟だからそうなのかもしれないが、ただ、その腰の低いようなもの言いは、あの男とは違っていた…
 とつぜんドアをノックする音がした。母が外からわたしに声をかけた。
「りょうちゃん、こちらにいらっしゃい…」たぶん、わたしの顔を見てみたいとでも言ったのか。わたしはちょっと躊躇したが、こちらもその顔を見てみたいという誘惑もあった。あやを育ててきた両親だから、わたしも会う義務があった。わたしは自分の部屋を出て、ダイニングへ行った。
 わたしは気分が悪くなった。眩暈(めまい)がした。そこにいたのは、あの男とあの女だった。校長とその娘の優子だった。なぜ?なぜここへやってきたのだ!わたしは壁際のソファーに倒れかかった。優子がすばやくわたしの身体を受けとめて、立たせた。余計なことを!わたしはバランスを崩したのではない、バランスをとるためにソファーに寝ようとしたのだ。「心」のバランスは、横になるのがいちばんの平行を保つからだ。わたしは、優子の手を制して、ソファーに座った。母が…少し気分がすぐれないようで、申し訳ありませんと、わたしの代わりに謝っていた。その声が遠くに聞こえた。
「いえいえ…りょうさんですか、うちのあやとそっくりですな!ハハハ、そりゃそうだ、双子ですからな!」…ああ顔を見るのもいやだ!こんな人間がこの世の中に生きていていいはずはなかった。早く帰ってほしい…
「実は私も兄とは双子でしてな、よく声を間違われまして…」
「…そうでございましたか」母がとまどいの顔をして答えた。
「ところでりょうさんは、鵜沓家を継がれるのかな?もしや灰川家を?」
「…まだはっきりとは決めておりませんの」母の小さい声が聞こえる。
「ま、どちらでもよろしいかと思いますが…わたしの考えではですな、あやが灰川を継いで、長女のりょうさんが鵜沓を継ぐのがいいのではないかと」
 なんということだ!それが目的だったのか…校長と優子は死んでもなお、弟夫婦を使って、灰川家の乗っ取りを画策していたのだ。
 母は困り果てていた。そんなことは母にとって重要なことではなかった。わたしとそして、あやがいて、ともにこのまま暮らして行くことができれば、なにも望むことはないはずだった。そんなに財産が欲しければ、くれてやればいい…お母さん!わたしは見えなくなった眼をせいいっぱい見開いて、母を捜した。手を伸ばすと、誰かの腕があった…お母さん!つかむとその腕はわたしの手を振り払った。あの女の腕だったのか…手を下ろすと、ソファーに手があった、あたたかい母の手…母はわたしのそばに座っていた…お母さん!わたしは身を寄せた。母が肩を抱いてくれた。
「ま、奥さん、考えておいてくれませんか!…またあらためてうかがいますから」
「……」母は黙ったまま、ふたりを玄関まで見送った。待たしてあったタクシーが、向きを変えて雨のなかを走り去っていった。

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 あやの帰る日がやってきた。わたしは繋がった腕を切り落とされるような気がした。二ヶ月近くいっしょにいて、いまさら離れる理由が見あたらなかった。これからもずっといっしょに...
- 07.05.2012 10:48

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