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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 駅前を歩きながら、わたしたちは手をつないだ。五月の風がふたりをかろやかにした。民家の庭先にあるウチワサボテンを、妹はナイフで切りとり、鞄のなかに抛り込んだ。トカゲの餌だった。今日もトカゲを入れているんだ。じゃ、毎日トカゲはいっしょに学校へ行っているのだろうか。
「ねえ、トカゲを見せてよ」わたしは妹に言った。
「あたし、ねえじゃないわ、あやと呼んで!」妹が怒って言った。
「ごめん…あやちゃん」
「そう、それでいいのよ!」妹はわたしより、もっとはっきりした性格かしら…可愛い!妹の仕草も言葉も、声も、なにもかもすべてが可愛いと思った。
 ずんずん先を行く妹をわたしは追った。妹の歩くスピードはわたしの倍速かった。妹は道を知っていた。なぜだか、わたしを引っぱるようにして、先を歩いた。わたしは自転車を駅に置いてきたことを思い出した…まいっか、妹といっしょだもの、こんなに楽しいし。
 坂道もどんどん妹は登った。わたしはわざと体重をかけて、妹に引っぱらせた。それでも妹は、わたしなんか風船かなにかのように、軽々と坂を引いていった。
「ちょっと、りょうちゃん!…重いよ!」妹はわたしを振り返って、手を離した。わたしは妹にかけていた体重の反動で、後ろにひっくりかえって、尻もちをついた。手のひらが痛かった。妹は笑っていた。そしてわたしの手を引いて起こした。わたしの手のひらをひろげて、めり込んだ小石をはたいてくれた。血が滲んでくると、ぎゅっとまわりを押して、血をふくらませ、吸った。必要以上に吸って嘗めた。わたしは気持ちよかった。
 また手をつないで、坂道を登った。角を曲がるとわたしの、わたしたちのお家だ。母が窓のところから手を振っているはず…角を曲がると、母の姿はなかった。
 玄関を入り、キッチンへ行った。そこにも母の姿はなかった。わたしたちは手をつないだまま、部屋をひとつひとつ開けていった…どこにも母はいなかった。母が買い物?それは考えられなかった。いつも持って来てもらっていたので、その必要はなかった。ではどこに?
「トイレじゃない?」妹のあやが言った。
「そうね…」わたしたちはトイレのドアをノックした。返事はなかった。ドアを開けてみたが、だれもいなかった。開け放たれた小窓から、木々のあいだにお屋敷の屋根が見えた。もしかしてあのお屋敷かも…わたしはそう思って、母のライティングビューローの鍵を見に行った。鍵はなかった。母はあのお屋敷に行ったのだ。わたしたちも行ってみよう…そう心に思うと、すでにあやは、玄関へわたしを引っぱっていた。


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