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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 それからは通学のたびに、その子とホームで待ち合わせ、同じ車両に乗り込んで、いっしょに座った。わたしたちが来ると、だれもが座っていた席を立って空けてくれた。譲ったのではなくて、近づきたくなかっただけなのだ。わたしたちにとっては、その行為は嬉しかった。腰と腰をくっつけてこの子と座っていると、なにも会話はしなかったけれど、わたしの心は満たされた。
「…双子みたい」誰かのひそひそ声が聞こえた。
「…ほんとそっくり」
「きもーい」
わたしたちはそんなに似ているのだろうか。いくつかトンネルを電車が過ぎるときに、向かいの鏡になった窓ガラスに映る姿を確かめた。人と人のあいだにわたしたちふたりの顔が映った。その子も顔を上げて、わたしと鏡のなかで視線を合わせた。
 ほんとうによく似ていた。そっくりだった。違うのはわたしよりも長い髪の毛と、セーラー服のラインの色と、スカーフの色だけだった。
 みんなが気持ち悪がるのも理解できた。なにかに映して見ると、その違和感やゆがみや、非相似性が明確になり、心が安定するものだが、まさにわたしたちが今、その逆だった。なんでもない日常のなかで、あまりにも似たものがあると、それはかえって心を乱してしまうことがあるように、この電車のなかであまりにも似たわたしたちふたりの姿は、みんなにとってなにか非日常的で、許せない犯罪のような存在だったのだ。
 わたしたちの一メートル以内にはだれひとり近づかなかった。わたしたちはいつもふたりの空間を専有できたのだ…猿どもめ、きたない面をさげて、きたない口をおっぴろげて、シミのついた下着をわざと見せやがって…わたしはそう思った…いや、そう思わされた…となりの女の子を見ると、わたしを見つめていた。ほほえんでいる。わたしたちはいつのまにか、指と指をからませて、手を握りあっていた。

 ある日の午後、わたしは駅のホームで待っていた。あの子が来るのを。別の高校なので、ここで待ち合わせていた。今日、わたしはあの女の子を家に誘っていた。母に会わせたかったのだ。わたしには妹がいたことは聞いていたが、たぶん亡くなっているとばかり思い込んでいた。この子と遭うまでは、それを疑わなかった。でもいまとなっては、この女の子がわたしの眼の前にいるかぎり、そのことは信じがたいことに思えたのだ。母にこの子を会わせて確かめたかった。すべての事実を。
 その女の子がやってきた。長い髪の毛をなびかせて。その姿は誰かにも似ていた、わたしではない、誰かに…
 彼女は、わたしの腕にそっと触れて、先に電車に乗った。午後の車内はすいていて、朝とは違ってゆるやかな空気が流れていた。いく人かの女生徒たちも、けだるい感じで席に座ってケータイを打ちながら、脚を左右に投げ出していた。
 わたしと女の子は、席は空いていたけれど、ドアのところに立って、ガラスを手のひらで押していた。わたしの右手と、女の子の左手がかすかに触れあっていた。彼女の人差し指には指輪がはめてあった。それはどこかで見たことのあるものだったが、思い出せなかった。
 …でも、わたしたちはなぜこんなにも心が通じ合うのだろうか。ほとんど会話なんてしないのに…わたしの心に、彼女の心が響きあって、いつも重なっていた。わたしには不思議な体験だった。あのシャンデリアに座っていた少女がここにいて、わたしの横にいて、今、小指と小指をつつきあって存在しているのだ。わたしは心からいとおしいと思った。彼女を抱きしめたくなった…ああ、心が振動する…彼女も同じことを思っているのだ…わたしたちは人目をはばからず、ドアの前で抱き合って、キスをした…ああ、なんて気分だ!こんな快感ははじめてだった。電車の揺れと音が、わたしたちを幻想の空間へ運んだ…ああ、妹が見える…お姉さん…ああ、りょうちゃん…お姉さん…
「お姉さん…」妹がわたしの腕をつねった。
「……」眼を開けると駅についていた。わたしたちは降りた。妹の顔を見た。
「お姉さん、と言った?」わたしは妹にたずねた。
「ええ、お姉さん…わかったでしょ、わたしはあなたの妹!」妹はきっぱりと答えて、大股で歩き出した。美しい髪の毛が風に揺れて、ピアスをした耳が見えた…そうだ、やはり妹なのだ。あの時のちっちゃな少女と同じ、妹…
 わたしは嬉しかった。妹が生きていたのだ。ほんとうの妹が…でもなぜ?わたしにはわからなかった…


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