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Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 一時の激しい波は、かならず凪になるのだ。まるで遠潮が引くように、灰川家の話題は町から消えた。あの「事件」も「事故」として処理され、ふざけたゴシップとなって、町のみんなからは軽蔑と侮蔑と、そして、私達町のものはいっさい関係ありませんと、無視されていき、学校も閉鎖され、この町から、灰川家も薔薇園も、校長も学校も、すべて消され、葬り去られた。
 わたしたち親子にとっては、いい兆候だった。わたしたちの家の破壊を知った町の人々からは、募金が集まり、警察がお金と謝罪を持ってやってきた。市長も同行し、母に平身低頭謝っていた。わたしはそれをドアの陰で見ていたが、なんの感想もなかった、だって、あれはわたしの、彼らに対する処刑だったのだから…わたしが、わたしのお家が、少しぐらい罰を受けても仕方なかったのだから…なにも知らない母は可哀相だったが、あの犯罪者たちを、地獄に送り込むことができたのは、母にとってもいいことだったはずだ。
 なによりも、わたしは、わたしの妹にも逢えたし、父と伯母にも逢えたし、あれ以来、わたしの六歳以前の家族との記憶も、しだいに戻りつつあった。

 わたしはふたたび、父のノートと日記の整理にあたった。
 あの学校も消えたので、生徒たちはとなり町まで通っていた。わたしも市長のはからいで新しい学校へ行くことになった。朝早く駅まで自転車で駆け、そこから電車に揺られてその町の高校へ行った。電車のなかはいつも女生徒で溢れかえり、にぎやかだった。男の子たちは端へ追いやられ、我が物顔で電車を占拠する女生徒たちの、短いスカートと潰れた通学靴が踊った。
 その日もわたしは、いちばん連結部に近いところに立って、本を広げていた。女子高生はなぜこんなにも元気がいいのか、わたしにはわからなかった。まったく、屈託のない笑顔で、今までにどんな痛みも、どんな苦しみも味わったことがないと、その唇が大きく開いては閉じて、またぱっくりと開いていた。
 ふとわたしは、進行方向にあるとなりの車両をドア越しに見た…あの子は…あの子は、妹に似ていた…ほかの生徒の影に隠れて見えなくなった。どの車両もいっぱいだったので、移動はできなかった。わたしは駅に着くのを待った。女生徒たちをかきわけながら、白い眼で睨まれながらドアへ急いだ。ホームに出るとその子を捜した。となりのドアから出てくるのを待った。みんなが、立ちどまっているわたしの背中を突き飛ばして、階段のほうへ行った…その子は見えなくなっていた。見つからなかった…ただ似ているだけだったのかもしれない…わたしはあきらめて、みんなの背中を押しながら、階段へ向かった。

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