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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 夏が過ぎて、ひんやりとした朝がやってきた。わたしは相変わらず、父のノートと日記を研究していた。夏休みが終っても学校には行かず、わたしの大切な仕事をこなした。ゆっくりではあったが着実に先に進んでいた。でも、それらはあまりにも流れるような文字であったために、わたしもともに流されることが多かったのだ。
 なかに、なにか符号のような、暗号のような文字を見つけた。ドイツ語のようでもあったが、単語中に数字が混じっていて、その意味はわからなかった…あとになってわかったのだが、それは薔薇園地図のなかの数字と、薔薇の名をドイツ語に訳して分解したものだった…
 母が時々、わたしの作業を見に来た。すっかり母も、元の身体に戻り、そのふっくらとした胸はいつも尖って、形がよかった。その尖った胸をわたしの腕に押しつけて、覗き込んだ…どこまで行った?母の眼がそう言っていた…まだまだよ、お母さんとお父さんが、あのお屋敷で出逢うところ…そう、ずいぶん進んだわね、あなたの登場はまだ先ね、がんばって…母は、そう心で言って、自分の部屋へ戻っていった。

 わたしは、またあのお屋敷へ行く必要性を感じた。どうしても想い出せないことがあるのだ。それはわたしの六歳までの家族の記憶だった。そこにはいくつかの断片的な画像しかなかった。あとはまったくの空白だった。まるで六歳で切り離されて、別人になったように、この家での想い出しかなかった。父との記憶をもっと取り戻したかった。伯母とのそれも、そしてその頃の母との想い出を…
 そこで校長が学校へ出かけたあと、母の鍵を使ってあのお屋敷へ入った。
 校長はどの部屋を使っているのだろう、用心深いやつだから、全部鍵をかけているに違いない。でも今日は、母のチェストの抽斗で見つけた鍵の束を持っているから、全部の部屋でも開けられるはずだった。中央の廊下は昼間でも薄暗く、眼を馴らす必要があった。ゆっくりとわたしは進んだ。一歩ずつ立ちどまっては、記憶を探った。ひと部屋ひと部屋、その把手に手をかけて、記憶の蘇りを待った。左右に分かれる廊下もすべて調べた。全部で九部屋あった。なにもそれらは教えてはくれなかった。右側の廊下の途切れたところで、膝を抱えて座り込んだ。少し廊下の板がひんやりした。どこかに掛けてある時計の音が聞こえている。わたしが父のノートと日記を見つけた部屋の扉の下から、あの時のように光が漏れてきた。きらきらと暗闇をいくつかに分かち、わたしの眼を射た。わたしは眼をつむった…わたしはそのまま眠ってしまった…
 バタンという音で眼が覚めた。話し声が聞こえる。校長の声だ。もうひとり女の声がする。笑っている。あの笑い方は佐々木優子だ。廊下の電灯がともった。わたしは立ち上がり、急いですぐそばの部屋の鍵を鍵束のなかから探した。ない、これも違う、これもだ、これも…ああ、ふたりがこっちへ来る、どうしよう…あった!校長と優子が廊下を右に曲がる寸前に鍵を開け、部屋にもぐり込んだ。この部屋にもしかして来るかもしれない、わたしは隠れ場所をさがした。クローゼットがあった。そのなかに身をひそめた…ふたりが近づいてくる。鍵をさし込んでいる。この部屋だ!この部屋の鍵を回している。
「あれ、おかしいわね、開いてる」優子がそう言いながら入ってきた。
「閉め忘れたんだろ!」校長ががなっている。
「閉めたはずだけど…」優子がいつもの人を問い詰めるような眼をして、クローゼットに近づいて来た。わたしは服のあいだに身をひそめた。
 ガタンと音がして戸が開いた。
「いやだー…やめてよお父さま!」優子が身をかがめた。長い髪が顔の両側から落ちて、その顔を覆った…お父さま?どういうことだ…
 優子はそのまま振りかえり、ふたりはキスをした。
「ああ…お父さま、わたしどれだけこの時を待っていたか…」
「大袈裟な!」校長は吐き捨てるように言った。
「だってもうすぐでしょ…このお屋敷がわたしたちのものになるのは」
「ふん、おまえの欲は底なしだな!…二軒ともぶんどるつもりか!」
「まあ、お父さま…人聞きの悪い、わたしがいつそんなことを!」
「おまえの魂胆は見えすいとる…ふたりにあれを盛っているのか?」校長の声がとつぜん小さくなった。
「ふふふ…どうだっていいでしょ、それよりはやくすませましょ…」
 優子はそう言って服を脱ぎ出した。校長も手早く服を脱いでベッドに横たわった。くちゅくちゅといやな音が続いた…
「おまえ…玲とは、姉妹になるんだぞ…」くちゅくちゅのあいまに校長の声が聞こえた…どういうことだ?…わたしは頭が混乱し出した。姉妹?母と?…優子が?わたしは声が漏れそうになった、思わず口を手で押さえた。
「なによ!…いまさら、わたしたちが親子だってことも黙っていたくせに…あの親子がどうなったって知らないわよ…あんな、あんな馬鹿がつくほどお人よしの母親と、神経症の娘なんか、どうなったって知ったこっちゃないわよ…このスケベ親父が!」パシッと言う音が聞こえた。
「あっ…出ちゃった…」
「馬鹿っ!」
「……」


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