プロフィール

michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

カテゴリ

小説ブログ 長編小説へ
            人気ブログランキングへ              

リンク

このブログをリンクに追加する

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSリンクの表示

最新トラックバック

最新記事

最新コメント



(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 わたしの目覚めは、これで何度目?目覚めても目覚めても、ほんとうの覚醒はあたえられず、たぶん死んでいるんだね、きっと。姉も、もうあてにならないし、お母さんもどこにもいない…わたしは見捨てられているに違いなかった。でもそのことはちっとも苦痛にならないし、むしろ、わたしの片想いの日々にはとてもしっくりきているんだ…「ねえ、道緒さん」あの女だ。馴れ馴れしい声で!佐々木優子、この女が現われてからだ。わたしの目覚めがなくなったのは。わたしが道緒だって、なぜ知ってる?きっと姉がしゃべったんだ。でも頭のない姉が?落っこちた頭のほうが唇を動かしてしゃべったのか?いずれ聞いてみるけれど、わたしは以前にもまして、頭痛に陶酔できるようになっていた。頭痛というものは、痛いに違いないが、痛みの種類が違っていた。切り傷の痛みとも、神経の痛みとも、心の痛みとも…つまり、なにも考えなくていいのだ。死を考えなくていい、もっとつらい、生きることも考えなくていい、彼女のことも、あの女のことも、母のことも、姉のことも、もちろん父のことも…ただ、わたしの娘、わたしのいとしい「りょう」のことは…忘れ去ることをさせてもらえなかった…仕方ないではないか、あの可愛いわたしの天使が、あっけなく死んでしまうなんて。姉の話では、玲が「りょう」を産んだ時、死産であったと。わたしは、どん底に突き落とされた。しかし、五分後に「あや」が産まれた。姉は、その「あや」をわたしに抱かせてくれた。ああ、可愛い、わたしの天使!「りょう」…わたしは「あや」を「りょう」と呼ぶことに決めたのだ。その日から、「あや」は「りょう」となった。そしてほんとうの「りょう」は天国に召された…だからわたしは、「りょう」を溺愛した。「りょう」の代わりに。玲のお腹のなかにいる双子にすでに名を決めていたわたしは、どちらのお人形さんにする?と、母にたずねられて、こっち!と指さす子供のように、まるで幼かった。双子のうち、一人は生きてくれたのだから、その子を「りょう」として大切にしてもいい?わたしは、姉と、玲の赦しを得て、「りょう」を慈しんだ…いつもわたしの膝の上にいた「あや」は、わたしの「りょう」となった。お人形さんは、静寂のたましいを宿しているように、「りょう」も静けさに満ちたたましいを育んでいった…わたしは「りょう」を膝にのせて、いつも四阿で風とともに揺れていた…わたしの「りょう」…いとしい「りょう」…可愛い「りょう」…「りょう」…

 「りょう」…「りょう!」…わたしは揺り起こされた。母がわたしを顔の真上から覗き込んだ。優先生の顔も隣にあった。いやな臭いがした。
「起きたわね」優先生がほほえんだ。
「ちょっと身体を拭きますよ、りょう」わたしはパジャマをふたりに脱がされて、裸になった。ひどい臭いだ!わたしは便も尿も、たれ流していたのだ。ベッドの上で、パジャマのなかに…わたしはすべての恥辱をいちどに浴びたように、顔を赤くした。手で顔を覆った。瞼の裏に手の影が見えた。
「りょうさん、気にしなくていいのよ…誰でもあることだから」優先生がわたしをなぐさめた。誰でもあるはずないよ、とわたしは言おうとしたが、顔を覆った手をのけることはできなかった。
 母がやさしくわたしの股間を拭いてくれた。母はいつもやさしい…ごめんなさい、お母さん…優先生は、わたしのお尻を、なにか取れない染みでも削るように、消毒液を染み込ませた紙で拭きあげては、それを床に投げつけていた。わたしは指の隙間からそれを見ていた…自分のなさけない姿と、優先生の乱暴なやり方とで、わたしは完全に居場所を失った。
 母が新しい下着とパジャマを着せてくれた。そしてわたしを抱え、わたしの部屋のベッドへ寝かせてくれた。ふたたび自分の部屋に戻ることができたのだ。ずいぶん久しい気がした。長い長い入院のあとに、わが家へ帰ったときって、こうなんだろうなと思った。
 部屋はなにひとつ変わっていなかった。わたしの机も本棚も、窓のカーテンも、窓から見える庭も…優先生はここにはいなかったのだろうか。なにひとつ触ったあとはなかった。わたしはすべてのものを、ものさしで計って置いていたので、少しでも動くと、すぐに気分が悪くなったから。それにしてもなぜだかわからないけれど…優先生はここにはいなかったのかもしれない。別の部屋で?母の部屋で?…でもまあいいや、すべてが以前のままで…え?あのノートと日記?…そうだ、父のノートと日記がなくなっていたはずだ…わたしはマットの下に手をやった。あった。それはちゃんとあった。優先生が盗んだと思ったのは、夢なのか?妄想だったのか?でもまあいいか。わたしは安堵して、眠りについた。


comment

ブログ管理人のみ

trackback

trackback_url

http://tensey.blog12.fc2.com/tb.php/233-b64add86
| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。