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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 母は、わたしの指のあいだに自分の指をからませながら、ゆっくりと話した。
「わたしがあなたのお父さまと、はじめて出逢ったのは、わたしが二十歳のときだったの…ある薔薇園で、それがとってもおかしいの…わたしがある背の高い薔薇の花の香りを嗅ごうとして、手を伸ばしたときに、ブレスレットが切れてしまったの。二重になっているピンク色の石の…ほら、まだわたしの宝物箱に入っているでしょ…あのブレスレットが薔薇の棘に切れてしまって、石を探していたの。わたしのお母様に戴いたものだったから…すると、男性がひとりふっといらして、お手伝いしましょうかって…それがあなたのお父さま。とても感じのいい方で、お母さん、一目惚れしてしまった…ふふ、あなたもそういうことあるでしょ」わたしがうなずくと、母はわたしに頭を寄せて、話しを続けた。
「それからしばらくして、いつもとっていた月刊誌に、素敵な薔薇の記事を見つけたの。『おまえはうなだれた薔薇の花』っていう、ほんとうに素敵な文章で、こんなにわたしの感性にぴったりの人って、世の中にいらっしゃるんだって、お母さん、ひとり、どぎまぎしたものなの。その方が描かれた薔薇の絵も載っていて、ほんとうにうっとりしたの。オールドローズの記事も、わたしは始めたばかりだったので、とても感動してしまって…その方に、勇気を出して、お手紙を書いたの。すると、すぐにお返事が来て…あなたのお父さまったら、おかしな人なの、まだお逢いしたこともないのに…ほんとうは一度出逢っているんだけど、そのときはまだ面識もないのに、とても濃い内容の…つまり、わたしの写真を下さいとか、突然ラヴレターを送って頂いたり…お母さん、とてもうれしかったの。同じ植物画をされていて、そして、わたしと感性の合う男の方から恋を告白されて…うれしかったの。でもそれだけだった…人生って、出逢いはいくらもあって、そのなかでほんとうの縁を持った人に出逢うことは稀だって、知っていたから…その後、その方から手紙が来なくなったの。いつも来ていた便りが来なくなるのは、とても残念で、淋しいものよ。わたしもつい、お仕事で…お母さんもね、雑誌に植物画を連載していたから、忙しくなって、手紙を出せなかったの…」母は、わたしの指を強く握って言った。
「ある日突然、その方のお姉さまという人から、手紙を頂いたの。それが麗紗さん。あなたのお父さまのお姉さま。以前、灰川様の薔薇園をぜひ見せて下さいと、お手紙書いたんだけど、お返事がなくて、どうかされたのかなって、思っていたところだったから、お姉さまのお誘いに甘えて、あなたのお父さまのお家に伺ったの…」
 母は、そこまで話して、話を切った。そして、窓の外を、今までまるで沈黙していた人のように、呆然と眺めた。
 わたしも、母といっしょに眺めた。庭は、うすやかな緑に覆われて、微風すらないのか、貼りついた絵のように動かなかった。


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