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Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


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 わたしはふたたび、母のベッドに縛りつけられた。姉は本を並べながら、ぱらぱらとめくっていた。なにかに眼が止まった。じっと見ている。目玉が上から下へ往復している。そして天を仰いだ。

 姉は玲を呼んだ。ふたりでその本を見ている…今さら重要なことでもあるまい、ぼくは全部の本を読んでいるんだからな…でもあまりにも熱心だ。真剣すぎる。
「ねえなにか面白いことでもあるの?」わたしは頭痛のあいまが退屈だった。ふたりだけで面白い文章を呼んでいるのが癪にさわった。
「ねえぼくにも見せてよ!」
 姉はわたしを見た。哀れみを含んだ眼で。玲もわたしを見た。もっと哀れみを帯びた眼で。

 母の「マルテの手記」はもう一冊あったのだ。わたしたちの部屋に隠しておいた一冊と、もう一冊は、箱に入った美しい装丁の本だった。その「マルテ」が、わたしの投げつけた本のなかに隠れていたんだ。だれも気づかずに。見つからないように上手に隠してあったのだ。父に見つかるとはずかしめの言葉をあびせられて、心がくずおれるようになったから。母はなんて可哀相な人だ。どれだけ耐えると、明日が来るのだろうか…そういうふうに考えて、わたしたちに、笑顔を見せていたんだ、きっと…

 その母の「マルテ」になにがあるというのだ?姉がようやくわたしにそれを見せてくれた。ふたりの似た哀れみの視線が、わたしの心の波を少しだけかき乱した。姉が指さしたところには、本文と本文のあいだに、びっしりとペンで文字が綴られていた。遠くから見ると。印刷の字が滲んでいるように見えた。
 姉が読んでくれた…「麗紗ちゃん、道緒ちゃん、おふたりがこれを読む頃には、どんな大人になっているでしょう。幸せになってくれているといいのですが。先立つことをお許し下さい。わたくしは母として失格ですね。おふたりを残して行ってしまうのですから。わたくしは、あなたたちの父親を殺しました。わたしを苦しめる棘を取り除きたかったのです。あなたたちにもあの父親がなにをしていたか…わたくしは許せなかったのです。この家の元凶を排除したかっただけなのです。許して下さい。麗紗ちゃん、道緒ちゃん、もっとこの名をたくさん呼びたかった。わたしの大切な双子ちゃん。何時までも愛しています。母より… …あなたたちの父親の首は『ラ・セデュイザーント』の根元に埋めています。どうかこれを読む時には、あなたたちの父親を許し、お墓へ入れてあげて下さい」
 姉は、淡々と、冷たくこれを読んだ。玲はこの愛情に満ちた言葉と、残酷な言葉の差にとまどっているように見えた。

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