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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


              
 玲がこの家に暮らすようになって、数年が過ぎた。よほど居心地がよいのか、姉との相性がいいのか、自分の家に帰る気配はなかった。姉も子供を産んでからは、精神を病むことはなくなった。
 それに反して、わたしはしだいに分裂がひどくなっていった。だれかに手をつないでいてもらわないと、即壊れた。壊れる直前はいつも上機嫌になった。それがはじまると、姉と玲とふたりして、わたしをベッドに拘束した。今だから言えるのだが、拘束はわたしをさらに別の人格へ移動しやすくした。抵抗する肉体が精神を沈めることができなくなるからだ。わたしの話し方は、父のようだった。わたしにもわかった。父が母を呼ぶように、姉を呼んだ。
 「れいさ…れいさ!」とてもやさしい声だった。
 ふたりは、ずっとわたしの横に立っていた。そして、わたしがAからBへ移動していくのをじっと見つめた。
 「なに、道緒さん?」姉が…いや、玲が答えた。
 「だれだ?道緒って!」わたしは侮蔑をこめて言った。
 「…」
 「ああ、あいつか、意気地なしの!…
  泣き虫、道緒!…
  あいつがどうしたって?…」
 「元気にしているわよ…」
 「元気?だれが…
  あいつはおれが殺してやったよ…
  とんでもないやつで、かわいそうだとちっとも思わなかったさ…
  だっておれのあそこを口を入れたまま泣きやがったよ…
  れいさ、おまえは感心に泣かなかったな!
  おれが見込んだだけはある、母さんを呼んでくれ!」
 ふたりは顔を見あわせて、どちらが母役になるか、目くばせした。
 「なに、お父さん…」玲が答えた。
 「ああ、そこへぶらさがってみてくれないか」
 「…」ふたりは天井の金具を見つめた。かつては本が並んでいた壁際の天井にそれはあった。蜘蛛が巣を作っていて、その糸がシャンデリアの光に照らされて、ふわふわと揺れていた。
 「どうした、はやく服を脱げ」わたしの暗闇の視線は、ふたりには向かわずに空中を彷徨っていた。ふたりはしめしあわせたように、ベッドの下から人の形をした布袋を取り出して、ロープをその腕にくくりつけ、はしごを登り、金具にロープを通して人形を吊るした。
 「吊るしたわ、あなた…見える?」玲が言った。
 「今日はだれを吊るした?」わたしはそれを確かめたかった。
 「あの看護婦よ、あなたの股間をブラシでぶった!」
 「ああ、いいね、そいつはいい…
  いい考えだ…
  今日はもうひとり吊るそう」
 「だれを?」
 「おまえだ、れいさ、おまえだよ!」
 「わたくし?わたくしはれいですの」
 「れい?れいはわたしの妻だ!
  おまえはだれだ」
 「わたくしも奥様と同じ名の、れいですの」
 「ふん、ふざけやがって…
  おれをだまそうたって、そうはさせんぞ!」
 「じゃ、わたしが吊るされてもいいわ」
 「おまえが?おまえはだれだ?わたしの妻か?」
 「ええ、そうよ、あなたの妻よ、妻のれいよ!」
 わたしを拘束していたベルトが切れた。わたしが思いきり力を入れたからだ。少し腕が切れて、血がすじになって滲んだ。上半身が自由になったわたしは、そこにいる姉か、玲か、どちらかにつかみかかった。もうひとりがわたしの身体を押さえつけようとした。あっさりとわたしはベッドにふたたび縛りつけられた。切れたベルトはわたしの胸の上でくくられていた。まるで荷物のようにだ。前よりもきつく縛ってあった。心臓の鼓動がベルトに伝わった。
 天井ではさっきの人形が、蜘蛛の巣を被って、揺れていた。

 わたしには、それらが見えた。この部屋で起きているすべてのことが。とても冷静な自分がそこにいて、天井の隅から見下ろしているかのように鮮明に、この光景が見えた。
 なんという醜態だ。こんなやつはお話にならない、さっさと埋めてしまえばいいんだ。我が儘で、傲慢で、偏執狂の、そしておしゃべりときてる。父親の風上にも置けないやつだ。殺せ!殺せ!殺ってしまえ!父を殺せ!…

 みるみる血の海がひろがった。絨毯の色模様が消えていき、赤一色の模様になった。血の吹き出しようが見事なので、みんながそれを眺めていた。美しい噴水ショーでも見るように。姉もいた、玲もいた、あの可愛い双子ちゃんたちもいた、その後ろには、わたしの母もいた、母の肩に手を置いてほほえんでいる伯母もいた。みんないた。ただひとりいないのは、噴水ショーの主役の父だけだった…

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*35 Re: 緋褪さま
かってにリンクしてごめんなさい。
なんてことばをかけてよいやら、
ぼくはわからなかったんです。
しだいにことばをかけられるように、
なっていくような気もします。
よりやさしくなったような緋褪さん…
- 09.14.2010 09:11

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