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michianri

Author:michianri
せつない 想い…
つたない ことばたち…
やりきれない 心…

『詩片日記…薔薇園…片想い』

第一章『詩片日記』
surrealiste
 hypochondrie
    ~prologue
       灰川道緒

第二章『薔薇園』
     
       鵜沓 綾

第三章『片想い』

       野川美千夫  

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(c) 片想い…
design by Echizen
photo by mizutama

せつない ラヴレター つたない ことば やりきれない 日々… 


 昔、お屋敷があったというこの広い土地の向かいにある、お家に住んで6年目のことだった。一目見てわたしは気に入ったのだ。
 白い壁に、赤いふちの窓、屋根はわたしの希望で、スペイン瓦に葺き替えてもらって、オレンジ色がまぶしかった。庭は、落葉樹がぐるりと取り囲み、なかはハーブ園になっていた。「園」というほどの広さではなかったけれども、三十センチほどの高さで石組みされた花壇が、可愛い形のパズルになっていて、それぞれにグレイグリーンや、シルバーグリーン、エメラルドグリーンのハーブたちが、ふちからこぼれ落ちるように育っていた。テラスに座ると、わたしは極上の香りに包まれて、しばし眼をつむって、夢想を楽しんだ。

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    『片想い』         
 わたしはなにか胸が熱くなるのを覚え、目覚めた。なんということだ。お屋敷跡に、巨大な重機が見えた。外に出ると、わたしは目の前に繰り広げられている光景に釘付けになった。それは、次々に樹木をなぎ倒している生きた機械達だった。音はたてずに、そっと、桜の木や、ライラックの垣や、炎の形をしたユリノキや、真っすぐに茂ったホオノキを倒しては、まるでそれらを食べているような丁寧さで、「森」を駆逐していたのだ。
わたしの憧れでもあった、そのようになりたいとも思った、巨大なオガタマノキを、誰かが見上げている。神々しいものに圧倒されて、身動きできないでいる旅人のように、たたずんでいる…
神木に、畏敬の念を感じているのだろうか…
それは、わたしの希望でしかなかった。彼は、顔を向こうにやると、手をあげて仲間を呼び、巨木の倒し方を指示していた。オガタマノキの天辺を指差し、こうやって吊り下げて、こうやって切り倒し、こうやって引き摺り…
この木は守り神だった。この地の主でもあったはずだ。それをほんとうに切り倒してしまうのだろうか…わたしは唖然として、玄関前に立ちすくみ、見続けた。
お屋敷のレンガの塀も、もとは薔薇園だったという広い薮もすべて、なにもない平地にされてしまうのだろうか。あのうわさはほんとうだったのだ。
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